あいさつ

ごあいさつ

公益財団法人日本医療総合研究所
理事長 森田 しのぶ

 

当研究所は、2013年4月に「公益財団法人」として新たにスタートしてから5年が経過しました。
皆様からのご指導・ご助言や研究・研修委員の皆様のご活躍によって、「保健・医療・介護・福祉」に関する様々な調査研究活動・セミナー・研修会等の開催や季刊誌『国民医療』の発行など充実が図られています。
いま、社会保障制度の見直し・後退が強まるなか、医療・社会保障充実のため、当研究所の果たす役割は大きいと感じています。
今後も、「保健・医療・介護・福祉」の向上と国民の保健衛生の向上をめざし、調査・研究活動や情報発信の充実に努力していく所存ですので、よろしくお願いいたします。
また、本年4月より当サイトに掲載しております『ニューズレター』、ご活用いただければ幸いです。

2018年6月28日

 


憲法を前面に安倍社会保障改革への反論・反撃を

横山 壽一(公益財団法人日本医療総合研究所副理事長、佛教大学教授)

 

安倍政権の暴走と無法ぶりが加速

新年にあたり、一言あいさつを申し上げます。
昨年は、安倍政権の暴走と無法ぶりが一段と加速した一年でした。森友・家計問題での虚偽答弁・居直り、カジノ法、働き方化改革法=長時間労働野放し法、改正入国管理法等の強行、沖縄辺野古での埋め立て強行、その過程で明らかになった公文書改ざん、労働時間データの改ざん、技能実習生実態調査結果の隠ぺいなど目に余る無法ぶりが相次ぎました。加えて、官僚のセクハラと大臣による擁護、年金過少支払い問題、障害者雇用の水増し問題、民間でも日産ゴーン会長の不正、スポーツ界の不正・ハラスメント、医学部入試の不正等、日本社会の劣化とも言える事態が次々と明らかになりました。
こうした事態を前に、日本における民主主義の危機を感じ取った国民は少なくないと思います。すべて安倍内閣の責任とは言いませんが、政治が真実と向き合い、不正や差別・不平等を許さない断固とした姿勢を示していれば、これほどまでの劣化を招くことはなかったとも言えます。その意味で、政治の責任、安倍内閣の責任は小さくありません。

憲法改正をめぐる攻防

暴走を続ける安倍政権が、次にねらうのが憲法改正です。安倍首相は、第二次安倍内閣発足以来、一貫して憲法改正をめざすことを公言してきましたが、昨年の内閣改造以降、さらに動きを強め、今年は、年明けから改憲への意欲を繰り返し表明してきました。誰よりも憲法を守らなければならない立場にある首相が、国民が望んでもいない憲法改正を率先して唱え続けていること自体、きわめて異常です。
とはいえ、事態は安倍首相がめざしている通りに進んでいるわけではありません。昨年の臨時国会で、憲法審査会において改憲4項目を提示して改憲論議を加速化させ、今年の通常国会で改憲発議、そして国民投票へと持ち込むことを目論んでいましたが、野党の抵抗で憲法審査会は開かれず、最後は会長の職権で強行に開催したものの、新たな幹事を選んだだけで改憲についての審議は全く行われませんでした。安倍政権による憲法改正を許さない市民の幅広い運動と野党との共闘がもたらした貴重な成果と言えます。今年も、引き続きこうした共闘の力を高め、憲法改正の動きを封じ込める取り組みに全力を注がなければなりません。

進む社会保障の実質的改憲

こうした共闘の力の強化は、憲法改正だけでなく、安倍社会保障改革を許さないためにも強く求められています。安倍政権は、明文改憲を掲げながら、同時に様々な分野で制度・政策を見直して憲法を変えてしまう実質的改憲も進めてきました。その最たるものが社会保障です。社会保障・税一体改革から始まり経済・財政一体改革へと続く一連の安倍社会保障改革は、文字通り憲法25条を踏みにじる実質的な改憲です。安倍社会保障改革の中心的な理念である「自助・互助・公助・共助」そのものが、社会保障に対する国の責任を蔑ろにするもので憲法違反です。最近、政府がしばしば持ち出す「大きなリスクは共助、小さなリスク自助」は、憲法を無視し生存権・生活権を否定する安倍政権の社会保障観を端的に示すものと言えます。
社会保障各分野の給付や負担の見直しについても、同様に憲法無視が目立ちます。健康で文化的な生活水準を全く無視する生活保護基準の引き下げ、自立を制度に依存しない状態だと歪曲し介護保険や医療保険を使わない・使わせない取り組みの強要、地方自治を否定する「地域差」是正と称した医療・介護の削減、最低生活保障を顧みない保険料・利用料の際限ない引き上げ等、新たな手法を次々と繰り出して抑制・削減に狂奔する姿は尋常ではありません。本気で社会保障を壊そうとしていると思わざるを得ません。

安倍政権への反論と反撃

安倍政権が長きにわたって繰り広げてきた社会保障改悪を前にすると、それを食い止め転換を図ることの難しさを感じる国民も少なくないと思います。安倍政権が行っていることに「それもやむなし」と考えざるを得ない合理的な根拠があれば、不本意ながらも受け入れざるを得ないのかもしれません。しかし、生活保護基準引き下げの手法、制度からの自立、地域差の解消など、どれをとっても合理的な根拠はもってはいないどころか、誤りばかりです。繰り返し強調されるのは「制度の持続可能性の維持」や「財源不足」ですが、これらも根拠とはなりえません。なぜなら、国民生活を守ることができない社会保障が残っても制度の持続とはいいませんし、社会保障に充てられる財源が初めから決まっているわけではない以上、財源不足は成り立たないからです。
したがって、いま国民が感じている困難さは、本当の困難さではなく、いわば創り出された困難さ、私たち自身の思い込みから生じている困難さに他なりません。そうであれば、その壁を乗り越えていくためには、安倍政権が繰り出す手法、国民を説得するための説明のひとつひとつに丁寧に反論してその根拠のなさを暴き、あわせてオールタナティブを示して行く必要があります。そのために用いることができる最大・最強の味方が憲法です。憲法理念から導き出される権利と原則を明らかにし、それを踏まえながら反論し、新たな選択肢を示すこと、これが今求められることです。

社会保障の可能性を憲法で語ろう

憲法は、社会保障の限りない可能性を示しています。憲法を活かせば、さらに豊かな社会保障を作り出すことができる、そのことを私たち自身が自分自身の言葉で生き生きと語ってこそ、憲法を守り社会保障を守り発展させる力に高めることができます。日本医療総合研究所もそのために全力を尽くします。本年もよろしくお願いします。

『国民医療』2019年冬号 №341より