あいさつ

公益財団法人日本医療総合研究所
理事長 中野 千香子

 

当研究所が「公益財団法人」として新たなスタートをきったのは、2013年4月1日、早いもので、まもなく5年目の春を迎えます。
この間、多方面の皆様からご指導、ご助言を頂きながら運営してまいりました。研究・研修委員の皆様のご活躍もあり、季刊誌「国民医療」はなお一層の充実がはかられています。2016年12月に開催いたしました「医療・介護フォーラム」は、「何のための介護保険制度なのか?介護保険『卒業』の本質と介護離職問題から考える介護保障への課題」をテーマに、参加者の皆様とも意見交換ができる充実したものとなりました。
今後も、国民の保健衛生の向上をめざし、求められる情報の発信や、研究活動の充実に努力していく所存です。

2017年3月24日

 


憲法の限りない可能性を語り、平和・社会保障を守る国民的合意を

横山 壽一(公益財団法人日本医療総合研究所副理事長、佛教大学教授)

 

国民と正面から向き合えない安倍政権

新年にあたり、一言あいさつ申し上げます。
昨年秋の総選挙で自民・公明与党は、再び3分の2の議席を獲得しました。しかし、総選挙の結果は、与党が国民から圧倒的な支持を得ていることを必ずしも意味しません。実際にも両党の得票数はほとんど増えていません。にもかかわらず3分の2の議席を占めたのは、何よりも小選挙区制度によるものです。しかも、その得票でさえ、施政方針も示さないままでの冒頭解散、森友・加計問題の徹底した隠ぺい、北朝鮮問題を国難と見立てた危機の扇動、直前での幼児教育・保育無償化の打ち上げ等、支持を掠め取るためのあらゆる手立てを尽くしたうえでの結果です。希望の党の野党分断も後押ししました。安倍政権が国民に正面から堂々と向き合って支持を訴えることができない状態に陥っていることの証左です。
それもそのはず、森友・加計問題をはじめ、安保法制、共謀罪、南スーダン問題など、強行しようとすれば激しい国民の批判に晒されて立往生してしまう場面に何度も直面してきたからです。姑息な手段を使って国民を騙し続けなければならないのはそのために他なりません。
安倍政権は、こうした国民に隠し続けて騙し討ちを食らわせる作戦を、あろうことか憲法改正でも取ろうとしています。安倍首相は憲法改正への強い意欲をことあるごとに示しながら、公式な場では語ろうとせず、国会で聞かれると「読売新聞を読め」と国民を愚弄する答弁を行う始末。総選挙では公約に目立たないように書き込み、街頭演説ではほとんど触れないでやり過ごし、選挙が終わると一気に動き出すというあくどさです。

憲法改正への強い意欲と進む戦時体制づくり

今年は、この憲法改正問題が最大の争点となることは必至です。実際にも、安倍首相は、昨年5月3日の憲法改正を求める集会へのビデオレター発言に続き、総選挙後の12月には講演で、東京オリンピックが開催される2020年を「日本が大きく生まれ変わる年にするきっかけとしたい」とし、「新しい時代の幕開けに向けた機運が高まる時期であるからこそ、憲法について議論を深め、国の形、あり方を大いに論じるべきだ」と発言、「与野党を問わず具体的な案を持ち寄って、衆参両院の憲法審査会の静かな環境の下で議論を深めていただきたい」と呼びかけました。そして、今年の新年記者会見では、「戌年の今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような、憲法のあるべき姿をしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論をいっそう深めていく。自民党総裁として、そのような1年にしたい」と改めて強い意欲をあらわにしました。
これらの動きは、2019年7月の参議院議員の任期満了まで国政選挙がないことをにらんでのことです。憲法改正は、最終的には国民投票で決めらますが、憲法改正の発議自体の是非や具体的な改正内容を国政選挙で問わないままで動き出し、憲法改正案をまとめたうえで国民投票にかける計画です。
安倍首相のこれまでの発言や自民党での改憲論議から、第9条の改正が最大のねらいとして定められていることは明らかです。自衛隊の皆さんに頑張ってもらっているのに憲法に明記されていないので肩身の狭い思いをされている、第9条の1項2項を残したままで自衛隊を明記することも可能だなど、憲法の理解などお構いなしに、何としてでも第9条改正を成し遂げようとする「本気度」をそこに伺うことができます。それは、言うまでもなく2015年に強行した集団的自衛権にもとづく安全保障法制に沿って、自衛隊の全世界への派遣を可能にし、戦争できる国づくりをめざしているからに他なりません。
第9条改正の準備と並行して、北朝鮮をめぐる動きを最大限に利用しながら、装備の最新鋭化と戦時体制への地ならし(Jアラート、ミサイル防衛訓練等)が着々と進められていること、秘密保護法・通信傍受法・共謀罪法等で、国民監視の体制が飛躍的に強化され実施されようとしていることにも目を向けなければなりません。

平和・社会保障を守る国民的なうねりを

医療・介護をはじめ社会保障にかかわる私たちは、誰よりも平和を脅かす動きに敏感でなければなりません。それは平和こそ最大の福祉であり、生存権・生活権の保障であることを数多くの歴史的体験を通して深く認識し、戦争による人権蹂躙を二度と繰り返してはならないとの決意を胸に、人権としての社会保障の発展をめざしてきたからです。平和が壊されるときは社会保障が壊される時であることをあらためて自覚する必要があります。
 同時に、当然ですが、社会保障が壊されようとしている時は、平和が壊されようとしている時でもあります。「自助・共助・公助」、「我が事・丸ごと地域共生社会」による社会保障破壊の動きは、国民の相互監視や福祉抑制を通じた戦時体制づくりの一環としての側面もあわせもっていることも見ておかなければなりません。
 憲法改正の動きに対して、改正が国民に利益をもたらすどころか逆に利益を損なうものであることを明らかにし、合意を広げていく必要があります。そのためにも、憲法を変えさせないというだけでなく、憲法を守り憲法を生かしていくことが、どれほど私たちの暮らしを豊かにしていく土台になっているか、そのことを生き生きと語る必要があります。
すでに「安倍9条 改憲NO!全国市民アクション」が結成され、3,000万人の「安倍9条改憲NO! 憲法を生かす全国統一署名」が提起されています。この機会を生かして、大いに憲法を語り、改憲ノーのうねりを全国で作り上げていきましょう。

『国民医療』2018年冬号(№337)