ごあいさつ
理事長 佐々木 悦子
当研究所は、2013年4月に「公益財団法人」として新たにスタートしてから10年目となりました。この間の皆様からのご指導・ご助言や研究・研修委員の皆様のご活躍によって、「保険・医療・介護・福祉」に関する様々な調査研究活動、セミナー・研修会等の開催や、季刊誌「国民医療」の発行など充実が図られています。
今般の新型コロナウイルス感染拡大によって、日本の医療・介護提供体制や社会保障のぜい弱さが浮き彫りになりました。新興・再興感染症や災害など不測の事態においても、医療・社会保障充実のため当研究所の果たす役割は大きいと感じております。
引き続き、「保健・医療・介護・福祉」の向上と国民の保健衛生向上をめざし、調査・研究活動や情報発信の充実に努める所存です。今後とも、よろしくお願い致します。
全世代型社会保障改革と応能負担
1.ご挨拶~国民医療の向上~
2026年、最初の『国民医療』の発行にあたり、みなさまにご挨拶を申し上げます。
旧年中は当研究所の活動に多大なるご尽力を賜り、誠にありがとうございました。
本年も保健・医療・介護・福祉の向上をめざして、調査・研究活動および情報発信の充実に努めます。引き続きご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。
当研究所は前身となる国民医療研究所の設立(1985年)を起点に、国民医療の向上を目的に活動し、2013年からは公益財団法人日本医療総合研究所となって現在に至っています。季刊発行している『国民医療』は今号で369号となり、現在では研究所から執筆を依頼し掲載している論文だけでなく、投稿し査読の上、掲載するという査読プロセスも設置しています。ご活用頂ければ幸いです。
2.調査・研究活動
調査・研究活動について「災害と地域医療の研究部会」では、能登半島地震の被災地である奥能登地域を対象にした実態把握を行い、被災地の住民生活にもとづいた地域医療のあり方を検討してきました。2025年は4月、8月、12月に現地調査を実施し、被災地の仮設住宅にお住まいの方々をはじめ、保健・医療・介護・福祉の関係者、自治体職員等にお話をお伺いすることができました。
人口減少地域である奥能登地域において、震災を契機としてよりいっそう地域医療供給体制等の再編・縮小が加速し、住み続けることが難しくなるのではないかという私たちの問題意識を、現地の奥能登のみなさんと共有することができました。奥能登で住み続けたい、働き続けたいというみなさんの願いをもとに、2026年も継続して調査活動を行い、提言をまとめたいと考えています。
新たな部会としては、2025年度から「介護保障のあり方に関する研究部会」を設置しました。介護事業者の倒産が過去最多となり、訪問介護事業者がそもそも1件もないという自治体も増加するなど、介護事業の安定的な供給が各地で課題となっています。介護労働者の処遇改善も長らく課題とされながらも解決に至る道筋は見えていません。
一方で、介護分野の生産性の向上としてデジタル化や介護ロボット導入などの政策推進が図られていますが、果たして、介護事業の安定的な供給、そして介護労働者の処遇改善に貢献するのかどうか、研究部会で検討を加えて、介護保障のあり方についての提言を行う予定です。
3.住み続ける権利
社会保障をめぐる政策動向では、後述するように、2027年度から始まる新たな地域医療構想策定までに病床削減を急ぎ、各地で病院の再編・統合をはじめ医療や介護等の提供体制縮小が顕著となっています。医療等の公共サービスの縮小で、より地域の縮小再生産が加速し、住み続ける権利1が保障されない状況が各地で拡大するのでは、との懸念が浮上します。
当研究所では住民はもちろんのこと、人権保障のにない手でもある保健・医療・福祉・介護の労働者の方々の保障水準にも着目し、継続して研究を進めていく所存です。
